銅酸化物超伝導の臨界温度の物質依存性の理論


銅酸化物は高い臨界温度を示す高温超伝導体として知られるが、その中でも臨界温度の物質依存性がある。単位胞内にあるCuO2層の枚数によって臨界温度が変化することはよく知られているが、単位胞内にCuO2を一層のみ含む、「一層系」のなかでも、ランタン系は最大〜40K、水銀系は100K近くと、大きな物質依存性がある。我々は一層系における臨界温度の物質依存性の起源を理解するために第一原理計算から構築した2軌道模型を導入した(図1)。従来の研究においては、フェルミ面の形状のみによって、物質依存性を理解しようとする研究が大勢であったが、このような視点に立つと、実験的に観測されるフェルミ面形状と臨界温度の相関関係は一見、理解しにくいように思われる。ところが2軌道模型を考え、軌道間のエネルギー差の違いによって、フェルミ面形状が制御されていることを考慮すると、実験的に観測されている臨界温度の物質依存性が自然に理解できることを示した(Rf-102)。

      

2軌道有効模型のバンド



上段:2軌道間のエネルギー差に対する超伝導のエリアシュベルグ方程式固有値の変化。下段:2軌道模型のエネルギーダイアグラム。