有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)2Xにおけるペアリング対称性

有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)2X (X=Cu(NCS)2等)は擬2次元的な有機超伝導体である。臨界温度は10Kを超えるものもあり、有機超伝導体の中では高い。結晶構造はBEDT-TTF分子がダイマーを組んでおり、ダイマーをひとつの固まりとみなすと、それが異方的三角格子を組んでいる。我々は異方的三角格子上のハバード模型を量子モンテカルロ法により扱い、銅酸化物と同様のd波超伝導相関が発達することを見た(文献Rf-26)。しかし、その後の熱伝導やトンネルの実験においては、これとはギャップのノードの方向が45度回転した方向にある、という報告がなされた。そこで、我々はダイマーを一つの固まりとみなすのではなく、ダイマー内の分子一つ一つをサイトとみなすハバード模型をFLEX近似により、扱った。その結果、ダイマー化の度合いが現実的な領域では二種類のd波が拮抗し、アニオンの種類によってどちらの可能性もあり得ることがわかった(文献Rf-41 , Rv-3)。