narrow band+wide band共存系における高温超伝導の可能性:
          電子ドープされた梯子型銅酸化物

バンド幅の広いバンドと狭いバンドが共存し、フェルミ準位が狭いバンドの直上または直下にある場合を考える。バンド間の相互作用が強い場合、バンド間の電子対散乱を使うと、狭いバンドの高い状態密度のために広いバンド内に強いペアリング相互作用が生じる可能性がある。しかも広いバンド内にフェルミ準位があることは、有効質量を重くすることがないため、超伝導に有利である。このアイディアを具体的に実現するための例として、斜め方向のホッピング積分t'を考慮した梯子型格子を考えた。図のようにt'がないと、梯子系のバンドは2本の同一のバンドが上下にずれたものになるが、t'があると、一方のバンドは狭くなり、一方のバンドは広くなる。



現実の梯子系として銅酸化物を考えた場合、FLEX近似によって得られるTcは図のようになった。ホールドープすると、フェルミ準位がnarrow band内にあるためにTcが高くならない(図の縦軸の0.01は40K程度)。これは現実のホールドープされた梯子系動産酸化物のTcが10Kのオーダーにとどまっていることと整合している。一方、電子ドープすると、フェルミ準位がnarrow bandの直上にくるため、Tcはホールドープ側よりも一桁高くなる(文献Rf-72)。