有機物質θ-(BEDT-TTF)2Xにおける電荷秩序の発現機構

θ-(BEDT-TTF)2RbM’(SCN)4 (M’=Zn,Co)は低温でc軸方向に2倍周期を持つ電荷秩序を伴って絶縁体になるが、その転移温度TMIよりも高温の金属相においても、短距離電荷秩序的なものがあることが実験的に示唆される。特に、diffuse X-ray scatteringの実験では、(qa,qb,qc)=(2/3,k,1/4)にsatellite spotが観測される。また、θ-(BEDT-TTF)2CsM’(SCN)4においては、(2/3,k,1/3)と(0,0,1/2)短距離電荷秩序の共存が観測されている。ここで注目すべきことは、これらのa軸3倍周期の波数がRbM’, CsM’それぞれにおけるフェルミ面のネスティング・ベクトルQnestと一致しているということである(下図)。しかし、電子間相互作用としてU, Vc, Vpのみしか考えない場合、相互作用のフーリエ変換がQnestとは異なる位置にピークを持つため、相互作用とネスティングの効果が競合してしまい、Qnestとは異なる位置にRPA電荷感受率のピークがでてしまう。そこで、遠距離相互作用Va, Vq, V2cまでを考慮した結果、相互作用のフーリエ変換の絶対値がQnestを包含する広い領域で最大になり、その結果、Qnestの位置に電荷感受率のピークが得られることがわかった(文献Rf-76)。

        

X線のsatelliteが観測される位置はRbで3x4, Csで3x3

 
   





RbM’の既約感受率とネスティング    CsM’の既約感受率とネスティング