研究テーマ


  研究概要

 物質の分子構造は色々な方法で研究されているが、有機化合物は一般に、単結合の回転によって立体的に異なった構造をとることが多い。(この構造を立体配座という。)

 そして、最も信頼性の高いX線結晶解析により得られた分子の立体配座が、溶液中でも同じである保証は全くない。たとえば水溶液中ではアルキル基などの疎水性部分が水から逃れるように集まり、アミノ酸やヒドロキシル基は水分子と水素結合する事は良く知られている。これはかなり強い分子間相互作用が支配する世界といえよう。

 一方この様な強い相互作用がない系では、溶液の構造や物理的性質はファンデルワールス力の反発力により決まるといわれてきた。しかし我々は、有機化合物の立体配座が普通の有機溶媒中でもその溶媒により異なることをNMR(核磁気共鳴)の結果より見いだしている。これは溶液中の分子の立体配座がファンデルワールス力の引力の影響を強く受けていることを示している。

 我々はNMRやIR等のスペクトロスコピーを用いて、分子の立体的構造とその置かれている環境における分子運動の情報から分子識別機構や物性にアプローチしている。

 

  研究課題

 分子間相互作用の研究

分子間における芳香環とメチレン鎖の相互作用の検出

 分子識別(認識)の基礎研究
 分子間相互作用が重要な役割
 弱い相互作用の重要性
 単純な系の弱い相互作用の厳密な測定

 

 

 固体高分解能NMRによる分子構造、物性研究

固体高分解能NMRによる天然の不溶性有機物の研究

 平成7年度の卒業研究では羊毛と羽毛の分子構造の比較を行った。どちらも似通ったケラチンでアミノ酸配列は分析的に分かっているが、三次元的構造は結晶性が悪くまだ分かっていない。
 固体NMRから羽毛はβシート構造が多いことが示された。このことから羽毛の方が高温まで安定であることを説明できる。
 このほかに、湖や海の底に堆積している腐食物質(石油や石炭のもと?)や、石炭の研究も卒業研究課題として考えている。

高分子複合材のリサイクル研究(高分子系廃棄物の大型リサイクル処理法の開発プロジェクトの一部)

 現在リサイクルしたカーボン・ファイバーの測定に挑戦中。(水素がなく、導電性があり従来測定が困難とされていた。)
 高分子複合材の分子間相互作用(高分子の融合度)の測定。−−−効率的分離法

高分子に浸透した有機化合物の挙動の研究(スキーと雪面との摩擦の研究。菅平宇宙電波観測所のプロジェクトの一部)

 スキーとスキーワックスの相互作用の研究である。
 高密度ポリエチレンに長鎖のアルカンを浸透させ表面の硬度と発水性をコントロールしてスキーの滑走性能を高めているといわれているが、必ずしも正しいとはいえない。
 それ以前にスキーが何故良く滑るのか、実は本当は分かっていない。
 スキーと雪面との摩擦現象を詳しく測定する研究の一部としてワックスの働きを検討する。
 現在、高密度ポリエチレンに浸透した長鎖のアルカンの量とその分子運動の測定法の開発中。
 
 

  スキーの科学

  スキーと雪の境界面で起こる現象の解明

 ・スキー科学関連情報(菅平宇宙電波観測所のページ内)
 
 



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