化学構造論・授業の参考のペ−ジ
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このペ−ジは講義のとき一部省略したこと、講義に関連したこと、OHPの資料、その他を掲載しています。
7/29更新
7/29の授業より
【マクロな性質とミクロな構造】
「物性」というマクロな性質は、原子や電子のようなミクロな構造の反映である。磁性という物性は電子のスピン、そのスピンの整列状態のことである。グラファイトやポリアセチレンの電気伝導性はπ結合が共役(ーC=CーC=CーC=Cー のようにπ結合が1つおきにつながっていること)しているとき、その結合方向に電子が動きやすいことに起因する。
【ポリアセチレン】
ポリアセチレンの実物(量子・物質工学科 石田尚行先生提供)

プラスチックでありながら金属光沢がある。これなら電気伝導性があっても不思議ではなさそう。
【セレンディピティー (Serendipity)】
予期していたものとは別に、偶然予期しないものを大発見すること、その能力をセレンディピティーという。例えば
ペニシリンの発見(Fleming)
X線の発見(Roentgen)
不斉化合物の光学分割(Pastuer)
などがある。(図書館に「セレンディピティー : 思いがけない発見・発明のドラマ」という本がある)
偶然発見するといっても、ただやみくもに実験すればよいのではなく、深い学識に基づいて未知の現象を解釈する能力が必要である。
ポリアセチレンの合成でノーベル賞をもらった白川先生の研究にもセレンディピティーがかかわっている。東工大(当時)の白川研究室の大学院生は「触媒を10mg加える」という指示を聞き誤って10g加えてしまったところ、金属光沢のある変なポリマーが出来てしまった。触媒を10gも加えるなどというのは化学者としての常識の範囲外であるが、それが大発見のきっかけだったという意味でセレンディピティーの典型である。
7/24の授業より
【連絡事項】期末試験のとき、四則(加減乗除)の計算できる電卓を持ってくること。
【電卓が市販される以前の学生は】
電卓が市販される以前の学生が計算問題(特に乗除)を解くときには
(1)ひたすら手で計算する
(2)計算尺で計算する。教養課程ならば3桁の精度があればよいので20cm程度の長さのでよいが、専門課程になると50cm程度の長さのでないと4桁は求まらない。かばんから長い計算尺がはみ出ていると、工学部の学生だとすぐ判ってしまう。
(3)対数表を使う。丸善の7桁対数表は教科書より高かったが、理工系の必須アイテム。ついでに、加減の計算にはソロバンが役に立った。
7/15の授業より
【連絡事項】レポート出題はプリント14の 「★教科書p.45 8」のみです。
【アルカリ金属】
アルカリ金属は、みなさん知っているように、周期表の1族のLi, Na, K, Rb, Csです。しかし、その反応性はかなり違います。 Li, Naは、今日のように湿度が高い日にナイフで切ると(金属とはいっても、1日前に搗いた餅程度の硬さです)、表面がすぐに酸化されて曇る程度です。Kはうっかり濾紙で拭いたりするとそのうち発火して燃えます。Csは私は扱ったことはありませんが、空気に触れると直ちに発火するとのことです。
なぜそうなるかは、今日の授業のイオン化エネルギーを考えれば判りますね。周期表で下へ行くほど、つまり最外殻(電子が占有している一番高い軌道)のエネルギーが高いほど、イオン化エネルギーは小さくなり、イオン化(この場合は+1の陽イオンになる)のためのエネルギーが少ない、すなわち酸化されやすいことになります。
ナトリウムを切るのに使った果物ナイフで、果物をむいてはいけません。
7/1の授業より(連絡事項)
【補講について】
6/2休講分の補講を補講期間のうちに行います。日程は教務課の発表を参照のこと。その日は過去問の演習を行います。
【期末試験について】
・ノート、プリント等の持ち込みはありませんが、電卓は可。
・術語(専門用語;例えばフントの規則)について3行程度で説明せよ、という問題を出題する。
・物理定数の値、周期表などを暗記する必要はない(必要に応じて問題の中に記す)が、基本的なことは覚えて下さい。
6/24の授業より
【軌道についてのQ&A】
Q:電子が存在しなくても。軌道はあるのか?
A:例えて言えば軌道は電車の座席、電子は乗客のようなもの。客がいなくても電車は走る。だから電子が存在しない軌道(空軌道という)というものはある。電子が基底状態から励起されるとき、その励起先は空軌道である。
Q1:p軌道に2個の電子が存在するとき、上半分に1個、下半分に1個あると考えてよいか?
Q2:p軌道の上側にある電子が下側に移るとき、存在確率0の節面を通るのはおかしくないか?
A:いずれの質問も電子を粒子と考えるからそうなる。電子は波であるから、ある1個の電子(という粒子)がどこに存在するか、という質問は意味がない。ただしp軌道では上半分と下半分に電子がある確率は等しい。
Q:軌道が重なっているとき、たとえばある点が 2s 軌道にも 2pz軌道にも属しているとき、その点にある電子はどちらの軌道にあるのか?
A:この問もやはり電子が粒子という考えから脱けきれていない。実は量子力学的には2つの軌道が重なることはないということが数学的に示される。直感的(図形的)な重なりと数学的重なりは異なる。
Q:s,p,d,fは何の略号か。
A:sharp, principal, diffused(ぼんやりした), faint(微かな) で、それぞれの軌道に関連するスペクトルの特徴に基づいていたが、現在では元の意味がなくなった。sはspherical(球形<sphere球)とする説もあり、それはそれで覚えやすい。
【勉強はしないより‥‥】
と歌っているのは、オバさんになってしまった森高千里で、曲名は「勉強の歌」
6/17の授業より
【ノートを速くとる工夫】
・略語を使う
例えば諸君の知っている ∴ や∵ 、この授業で使った≡(定義)、 ⇔(等価:論理的に同じ意味)
英語の論文などで使う e.g.(例えば)、i.e. あるいは viz.(すなわち)、etc. (など)、q.e.d. (証明終わり)、cf. (比較せよ)いずれもラテン語由来。
エネルギー → エネ
・略字を使う
∀(任意の)、∃(存在する)などの論理学の記号
中国の簡体字、俗字(国→口)
字画の省略、漢字のかわりにカタカナ
諸君が将来社会人となるとき、会議の報告書を作る参考になることを期待して。
【よくある誤字】
電価、 荷電子、 軌動, 軌導、 元子、原素、 確立
6/10の授業より
【長岡半太郎の切手】

(上部後方にBohr-長岡モデルが見える)
5/27の授業より
【ヘリウムの発見】
1868年の皆既日食のときにある分光学者が太陽のコロナのスペクトルを測定したところ、たくさんの輝線を観測した。これは授業で説明した原子の発光スペクトルであるが、その中に今まで知られていない輝線があった。後に、それは地球にはない、つまり太陽にのみ存在する新元素によるものと考え、ギリシャ語の太陽ヘリオス(Helios)に因んで、ヘリウム(helium)と名付けられた。約20年後、イギリスの化学者ラムゼーはウラン鉱石の中に同じスペクトルを示す物質をみつけ、ヘリウムが地球にも存在することが明らかになった。ウラン等の放射性元素のα崩壊によって放射されるα線はヘリウムの原子核であることを思い出そう。
太陽のスペクトル(solar spectrum)はL棟1階を入ったところに掲示されている。
4/22の授業より
【コンピュータの誤差】
コンピュータは誤差なく計算してくれると思うかもしれないが、コンピュータにも立派に誤差はある。
今は流行らないBASIC で書いたプログラムであるが、
10 A=0.1
20 S=A+A+A+A+A+A+A+A+A+A
30 PRINT S (S=) 1
ここまではよいが、さらに
40 D=S-1
50 PRINT D
とすると
(D=) 1.19209E-07(つまり1.19209×10-7)
となる。
4/15の授業より
【5W1H】
When, Where, Who, What, Why, How の5つの疑問詞の頭文字で、新聞記事を書くときに欠かせない項目であるが、これは何かをしようとするとき、する価値のあることかどうかを考えるとき必要な項目であると私は思う。
この科目をなぜ履修するのか自分で納得してから履修する方が意欲が湧くはずである。