◎滑走面の状況

a,滑走面の光学顕微鏡での観察

 スキーの滑走性能や撥水性に影響を与える滑走面の状況を探すのがねらいである。
 光学顕微鏡で観察、デジタルカメラで接眼レンズを接写。この実験の細かい方法と苦辛した点を以下にまとめた。

○レンズの選択
 光源を直接観察するところに送り込んでいるので、対物レンズが10倍までしか使えない(十分な光量が得られないため)。接眼は自由に使える。5、10、15倍を使用。

○光源
 60ワットの電球を使用。表面の状態を観察するときは、2個のライトを両端からあてる。コントラストを強調したいときは、1つのライトを正面からあてる。

○デジタルカメラ
 デジタルカメラ(SONYのDSC−Fl)と顕微鏡のレンズとの焦点を合わせ、固定するために、ユニバーサルスタンドを使用した。

○調査するサンプルについて
 サンプルのスキー板はチューンナップ(方法は下で説明)したものであり、ワックスはチェーンナップ以後塗り込んではいない。ワックスが滑走面材の奥深くに染み込んでいれば、ワックスの存在も確認できるかもしれない。その他に、滑走面に貼り付ける前の滑走面材(ピーテックス)も使用。これは旋盤で切り出されてきた物で、厚さ1.5mm、50×70mmのものである。

結果と考察

1)黒い斑点について
 滑走面材製造する際の結晶時に生じるものと考えられる。ピーテックスの旋盤で切り出されたサンプル片でも同じものが確認できた。一つ一つの大きさは、直径0.05〜0.1mmのオーダーで、形もまちまちである。不均一に分布している。
 

参考写真1

サンプル 
・ミズノGモード96−97のリール、細かいストーン仕上げ、照明は両端から2個 倍率150倍 上に写っている白い物は、0.1mmの鋼線


 

2)白い線について
 ストラクチャー(傷)と考えられる。傷はストーンマシンで入れている。ストーンマシンとはロールの砥石を回転させ、そこにスキーを押しつけながら通し、研磨して行く。砥石は旋盤で金属のロールを切り出す要領で、つねに削ってフラットを保っておく、その時の砥石への削り方でストラクチャーも決まる。客観的に見ると砥石で滑走面を引っかいていることになる。砥石のひっかき傷が、ストラクチャーである。
  白い線を顕微鏡で見てると、削ったときの状況が分かる。繊維を伸ばして切断している行程である。その証拠がケバである。ケバは繊維が引きちぎられて残った物である。このけばが無数にあり、また縦方向に同じ方向で引きちぎられているので、光が当たると反射して線に見えるのである。また、溝の中には大きく削られている部分もある。この大きな溝をチューンナップ店ではパターン的に入れようとしている。大きな溝がパターン的に入っており、その表面は無数の細かい溝で覆われている。イメージとしては木を裂いたときの表面と言えば適切である。
 

参考写真2

サンプル 
・ミズノGモード96-97のソール、細かいストーン仕上げ、照明は正面ら1個 倍率150倍

3)けばについて
 上記で述べたように顕微鏡で見る限り、板の繊維が剥がれかかって飛び出ている物である。当然色は滑走面と同じ色だが、光の反射の関係で白く見えるときもある。このけばは、合成樹脂のけばである。以上が観察の結果である。
 

参考写真3

サンプル 
・ミズノGモード96-97のソール、粗いストーン仕上げ、照明は両端から2個 倍率150倍


 

まとめ

 光学顕微鏡(50〜150倍)のスケールでは以上のことが確認できた。この溝やケバが以下のものにどのような影響を与えるかが興味がある。ワックスの染み込み、雪(氷)の結晶との摩擦の関係、雪と滑走面の間に水が存在するとして水との関係などである。特に、水との関係の中で撥水性は気になるものである。
 また、黒い斑点はなんなのか?ワックスはさらに細かい所まで染み込んでいるのか?



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