e,蛍光ワックス

 スキーの滑走面にワックスを塗った時、そのスキーに付着している量を測る装置をつくる。
 

◎装置の仕組み

 紫外線に反応する蛍光物質をワックスに混ぜ、それを滑走面に塗り、紫外線を当て、その時の蛍光を、カメラやスキャナーで読みとる。
 

◎装置の具体的利用

 ワックスを塗ったり、滑走前と滑走後の量を調べ、スキーの何処を使って滑っているかを調べる。
 

◎今回の実験の目的

 ベースワックスやパラフィン(ベースワックスはほとんどパラフィン)に蛍光物質を入れて滑走面に塗り、薄くはがしてときに紫外線を当てその蛍光が感知できる蛍光物質の分量を調査する。
 

◎実験方法、計画

 ワックスと蛍光物質を湯煎の中で混ぜ蛍光ワックスをつくり、そのワックスをブラックソールの滑走面にホットワクシング(アイロンでワックスを溶かしながら滑走面に塗り込む)した後、さまし、スクレーパー(プラスチックの板)で余分なワックス(厚く塗ってある)をはがす。その部分に紫外線ランプの光を当て、蛍光の強さを調べる。
 はじめ計算でモル比を求め、その計算上から蛍光ワックスをつくる。もし上手ない時は蛍光物質の割合を飽和状態にする。
 

◎重量パーセント濃度0.05%、5%、0.5%を目指してワックスと混合した。

No.1について

 混合物をビーカに入れたまま紫外線に当てると紫色に蛍光する。上質紙、わら半紙、滑走面材料片に溶けたものをそれぞれ落とす。玉状になり、それらは紫外線L(254nm)、H(336nm)を当てると共に紫色に蛍光しているかがわかる。上質紙、わら半紙は漂白剤(蛍光物質)が紙の成分にあるため混合物以上に蛍光してしまう。また材料片は表面がツルツルしているため光を混合物以上に反射してしまう。
 

No.2について

 上質紙、わら半紙、滑走面材料片に溶けたものをそれぞれ落とす。玉状と伸ばしたもの紫外線に当てると共に紫色に蛍光した。
 

No.3について

 混合物をビーカに入れたまま紫外線に当てると紫色に蛍光する。紙に落とし、玉にするだけでなく固まる前になすりつけて伸ばした。玉も伸ばした所も紙の蛍光以上に強かった。色は紙と共に紫である。
 
 

◎結果をデジタルカメラに納める

 デジタルカメラで上述のものを材料片に落としたものに紫外線を当てた状態で撮る。No.1とNo.3の区別がつきずらいのでカメラの前にガラスや備光フィルターをおいて撮ってみることにする。そうすることによって一応の区別はできるようになった。しかしコンピュータにデジカメの情報を取り込み、プリントアウトすると区別がつかない。デジカメの画像よりコンピュータの画像の方が劣っている。そこに原因があるように思う。
 

◎実際にスキーの滑走面にたらしてみる。


 

 No.4とNo.5のワックスをミズノのブラックソールのテール部分に20cm位のながさに混ぜたものを塗った(スキーのホットワクシングの要領)。むらができ厚く塗った部分は淡青色に光っている。次にスクレーパーではがし見た目均一に薄く剥がす(度合いとしてスクレーパーで削って鰹節の削ったようなかすがでなくなるまで)。しかし紫外線を当てても光らなかった。
 そこで思い切ってワックスに対して蛍光物質を飽和させたものを使ってみた。また、フェナトレンの他にピレン、アントラセンを使った。
 No.6とNo.7の混合ワックスを板に塗った。No.7の塗ったものはデジカメでもしっかりとコントラストが確認できた。ストラクチヤーにしみこんだ所までは見えた。
  No.8については、約1時間かけて温め続けたがピレンが溶けきらず、目分量で投入した分の半分ぐらいが石質化した。これ以上混ざらないものとして中止。上澄み液を紙にたらして紫外線に当てた。青白く蛍光した。
  No.9については、アントラセンも1時間かけたが、溶けずビーカの底に石質化したため中止。同じく上澄みを紙にたらし紫外線に当てた。黄緑色に蛍光した。
 このNo.8とNo.9の上澄みをブラックソールにぬった。ピレンは青白く、アントラセンは黄緑色に蛍光した。どれもしっかりストラクチャーのトーンが判った。
 フェナントレン(蛍光は紫)、ピレン(蛍光は青)、アントラセン(蛍光は黄緑)の3つの物質がワックスに混ぜられる(化学反応を起こさずコロイド状に混ざっている)ことが判明した。また、どの物質もワックスに対し飽和に近くまで混ぜる事によって、板に塗ってスクレーパーで剥がしたとき目やデジタルカメラでトーンがはっきり確認できる。これを利用してスキャナーやデジカメでこのデータを数値的に表すためにやってきた。これらのワックスはウォーターバスにつけて80℃〜95℃の間で混合物となる。
 それをブラックソールの滑走面に塗り、そこへ紫外線ランプを当てることにより各部質の独特の色に光る。どの物質に対してもその物質をワックスに対して限界まで溶かすと一番見やすいようです。
 塗ってはがすとストラクチャーが見える。一番見やすいのはアントラセンのミドリ色の蛍光であった。ランプが紫に光るために、反射があると、フェナントレンの紫やピレンの青白の蛍光では微妙なものが判別しづらいためである。
 このことから今後アントラセンを使うことにした。
 

蛍光ワックス実験in ザウス

 濃度は上から0.09、0.09、0.10である。
 ザウスは常に−3℃〜−4℃に保たれており、雪質は結晶が崩れた細かい雪である。非常に滑走性が悪い。
 9月9日の実験では直滑降で行った。前日に単光ワックスを塗り、滑走面はスクレーパで剥がし、ブラシをかけておいた。その直後ブラックライトを当てたときは、ストラクチャーの間に綺麗にはまっているワックスから紫色に蛍光していた。帰ってきてブラックライトを当ててみたところ何も光らなかった。微妙に残っていたとしても、反射でよく見えないと考え蛍光物質をアントラセンに決めた。
 9月15日の実験ではやはり直滑降で行った。前回と同じように処理し見た所同じように色だけミドリになっていた。滑走後は蛍光は確認できなかった。
  10月9日の前回と同じく前日に前回と同じ処理をし、距離を短くし、直滑降を行った。ワックスも普段使われているベースワックスに蛍光物質を混ぜたものを使用。深い傷のある部分では蛍光がみられたがそれ以外のフラットな面ではやはり落ちてしまったようである。
 

◎まとめ

 この蛍光ワックスについても数値的にワックスの消耗を表すことができなかった。ワックスがすそに剥がれてしまう原因を探り、耐久性の高いワックスを作ること。また、微量でもしっかりブラックライトに反応する蛍光物質を探し出すことがこの実験を成功させる鍵と考えられる。



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